さ え ず り

過去データ
〜〜〜『ほおじろ』2003.08.巻頭言から〜〜〜

自然保護とは何か? 6つのキーワードを提示します。

日本野鳥の会・千葉県支部

1

日本野鳥の会で自然保護が意識されるようになるまで。

日本野鳥の会は「国内最大の自然保護団体だ」ということがよく言われます。


たしかに会員数だけは多いのですが「自然保護とは何か?」と問うと、答えは必ずしも明確ではありません。


21世紀は「環境の世紀」と言われ、地球環境が壊滅的な状況に近づいていることは確かなのですが、自然保護の中身が不明確なままでは混乱が生じかねません。


日本野鳥の会は、1934(昭和9)年に、中西語堂が創設しました。


初めから自然保護を意識していたのではなく、探鳥会でも鳥巣観察をしたり、霞網の鳥屋場に見学に行ったりしたことが、記録に残っています。


やがて「野の鳥は野に」という考えが支配的となり、 飼鳥でなく野鳥を観察する探鳥会が野鳥の会の表看板になり、戦後には、空気銃・霞網禁止の活動を展開し、自然保護が意識されるようになったわけです。
『野鳥』創刊号は1934年、
東京、梓書房から出された。

2

自然保護の段階を整理してみると。

@ この段階までの自然保護は、飼鳥や、空気銃や霞網で捕獲される個体を、直接保護するわけで個体の保護でした。
A 他方、ツル、コウノトリなどの保護活動も盛んになりますが、これは個体群の保護です。千葉県内でいえば、オオセッカ、コジュリンの保護は個体群の保護になります。
オオセッカは、今年の調査では303個体の囀り雄を確認。志村眞澄氏撮影。
B 江戸時代までは、千葉県にもトキが生息していたようですが、現在、日本産のトキは絶滅寸前で、中国産のトキが飼育されています。これは種の保存の問題です。
C 戦後の高度経済成長下には、全国各地で開発が進み、鳥類の生息環境が失われました。野生鳥類の生息地を守る活動が始まり、自然保護は生息環境の保全の時代に入りました。
D 大規模開発は、各地で自然環境を壊滅的に攪乱し、いまや、単に生息環境の保全では間に合わぬ状態となっています。
谷津干潟は国設鳥獣保護区で、国際条約=ラムサール条約の指定湿地になっていますが、淡水の流入がなくなり、塩分濃度が上がり、アオサの絶好の繁茂地となっています。
アオサの下側は酸欠状態で、このままでは良好な干潟の機能を失ってしまいます。
淡水を入れ、潮通しを悪くしている地形を改変する必要があります。
生息環境の修復が急務です。

アオサに覆われた谷津干潟。ラムサール条約指定湿地だが、干潟は機能を喪失。
E 三番瀬では、毎年夏に青潮が多発し、底生生物が大量死し、冬場に飛来するスズガモは餌不足から、安定した群れを作れません。
普通種であるスズガモが、近い将来個体数を激減させないためには、青潮の起りにくい環境を人為的に作り、起きてしまった青潮に強い環境を整備せねばなりません。
われわれは、生息環境の再生に取組まねばならぬ時代に入ったと認識しています。

青潮で全滅した三番瀬のシオフキ。
NPO三番瀬の安達宏之理事長撮影。

採餌のスズガモ。三番瀬には餌がなく、
安定した群れが見られない。

アマモ場は「海中の森」。光合成で酸素が豊富で、多数の底生生物が生息する。

NPO三番瀬が次の発芽期のために
低温管理するアマモの種子。

3

ヒトはどうしたらいいのか?

ヒトは、地球の全生命史の最後に現れ、西欧型物質文明を発展させ、さらに、この50年で地球環境をここまで攪乱しました。
地球環境問題には、種の枠を超える問題、全地球的な問題も数限りなくあり、すべてはリンクして逃れられません。
谷津干潟のアオサの事例を見ても、法的担保だけでは生息環境は守れないと認識すべきでしょう。
三番瀬に関しても然りです。


谷津干潟では、腐ったアオサから硫化水素が発生する。干潟は無酸素状態になり、底生生物の生息も危うい。谷津干潟は、国設鳥獣保護区でラムサール条約指定湿地であるが、管理を怠れば、法的担保をしても自然環境は守れない。
千葉県の三番瀬円卓会議では、法的担保のことばかりが観念的に語られ、青潮の多発する現実の自然環境のことはないがしろにされている。本末転倒の謗りを免れない。