目次 | |
1. | 「すずめ」 |
2. | ホシガラスの見た海 |
3. | 白浜のオオワシ若鳥 |
〜〜〜 「すずめ」 〜〜〜 |
野田市 稲垣秀夫 |
先輩に勧められて、ミニサンクチュアリーを始めたのは、今から15年ぐらい前のことだった。 めずらしい鳥たちが来てくれることに期待をかけ、胸をワクワクさせながら餌台を作ったものだが、最初の来客はすずめ達だった。 「ああ、そんなもんだよ!」先輩はこともなげに言う。 ![]() やがて、餌の種類や、出し方、季節のうつろいにしたがって、メジロ、ウグイス、ヒヨ、シジューカラ、エナガ、ドバト達等、来訪者の種類も数も増していったが、常連はなんといってもすずめ達である。 見なれているはずの雀であるが、毎日眺めていると、少しずつ新しい発見が出てきた。 来訪者達はどうも一族らしい。偵察隊らしき数匹が、私が餌台に餌を置く様子を見とどけると、仲間に知らせに飛んでいく。やがて仲間をつれて戻ってくる。親分らしいのが、「これはオレが見つけたんだぞ!」と言っているように声高に鳴く。餌を置き忘れていたりすると、偵察隊らしき数匹が近くの電線等にとまって、催促するような鳴声を出す。私が餌を持って庭に下りて行くと「来た、来た。」という鳴声に変わる。 一族の子供達が加わると、なんともほほえましい。一族の数も年々増加はするが、十二〜三羽以上には増えないみたいだ。寿命と自然環境との関連で、必要以上には増えないのだろう。 ヒトリで思いをめぐらす日々は結構楽しいものだと知る。 ただ一つ気に添わぬことがある。毎日餌をやっているにもかかわらず、私の影を見ると、一斉に彼らが逃げる事だ。 ついでに糞まで垂れてゆく。 「もう十年以上のつきあいだというのに恩知らずなやつらめ!」一人つぶやく。 会社の近くに居る都心のすずめは、かなり近くへ寄っても逃げたりはしない。足もとまで餌をつつきに来る。 ![]() 都会のすずめと、田舎のすずめではこんなに違うのか。子供の頃に読んだ、都会と田舎のねずみの童話を想起する。 都会のすずめはスレているんだろう。 そう言えば、ドレースデンのすずめは大きくドッシリおちついていた。観光客がザワザワ居てもビクともしなかった。 日本人とドイツ人の体格の差と気質の相違が、そのまま、すずめにのりうつっているとでも言うのか。 先輩の一言でなにげなく始めたミニサンクチュアリーと野鳥の会への入会。すずめ達との些細な交流ではあるが、自分の世界が大きく広がったと言う喜びを感じている毎日である。 |