ほおじろの声

ほおじろ巻頭言 2022年3月号

千葉県内のシギ・チドリ類の動向

日本野鳥の会千葉県・幹事会

千葉県内のシギ・チドリ類の動向

日本野鳥の会千葉県が出来てから42 年,シギ・チドリ類の鳥相が大きく変わりました。

唯一増えたのはミヤコドリ

近年,ふなばし三番瀬海浜公園では冬期に500 羽以上が見られます。夏期にも繁殖年齢に達しない個体が見られます。 本会会員の皆さんはミヤコドリは普通の鳥と思っておられるでしょうが,本会創立時には全国的にも大珍鳥でミヤコドリを見るために各地を探し回る人がいたものです。 現在,個体数が増えたのは偶々のことで三番瀬海域の環境が改善したからと言うわけではありません。

東京湾内でミユビシギが増えたわけ

本会創立時,ミユビシギは九十九里浜で見るもので,東京湾内の干潟で大きな群れを見ることはありませんでした。本種は砂質干潟を好み,泥質干潟で見る機会はめったにありません。 九十九里浜で浜が痩せ,護岸が連なるようになってから,盤洲,三番瀬の砂質部分で大きな群れが観察されるようになりましたが,泥質の多い谷津干潟などに現れることはほとんどありません。

春の使者=オオソリハシシギの減少

春の谷津と言えばオオソリハシシギの夏羽で,桜の咲くころには総数400 羽ほどの赤い夏羽が見られ,その有様が小学校の国語の教科書の教材にもなりました。 この春,皆さんは何羽のオオソリハシシギを見ることになるでしょうか?

真っ黒なツルシギのまぼろし

赤いオオソリハシシギが春の干潟のシンボルなら,春の淡水域の象徴は真っ黒なツルシギでした。一群れ100 羽から200 羽が 県内10 か所以上の蓮田で見られたのですが,今では1 羽だけでも大騒ぎになってしまいます。

淡水性のシギ・チドリがいなくなった現実

ツルシギに続き,メダイチドリ,ムナグロ,ヒバリシギ,ウズラシギ,タカブシギ,キョウジョシギ,アオアシシギ,キアシシギ,チュウシャクシギ,タシギ,オオジシギ,タマシギなど,当たり前に見られた淡水性のシギ・チドリが軒並み,田んぼからいなくなりました。 ムナグロが,田植え前後の水田を真っ黒にするほどいたことを思うと胸が痛みます。

干潟環境の種は減少率が低い

近年,探鳥会などで見られるのは,ミヤコドリ,コチドリ,シロチドリ,メダイチドリ,ムナグロ,ダイゼン,トウネン,ハマシギ,ミユビシギ,オバシギ,コオバシギ,イソシギ,ソリハシシギ,キョウジョシギ,キアシシギ,オオソリハシシギ,チュウシャクシギなど, 海辺の干潟で見られる種です。田んぼを利用しない種は,減少率が低いようです。

淡水性のシギ・チドリ類が減少した時期

淡水性のシギ・チドリ類の減少がネオニコチノイド系農薬の使用開始時期以降であることを記憶しておくべきでしょう。

シギ・チドリ類の実態を見てください

淡水域,海辺の干潟,それぞれの環境で皆さんもシギ・チドリ類を見守ってください。