ほおじろの声

ほおじろ巻頭言 2024年9月号

青潮の科学
真夏に北風が吹くと青潮が発生
海の生物は窒息死する

日本野鳥の会千葉県・幹事会

夏の北風が青潮を引き起こす

 台風が房総沖を北上すると,灼熱の夏に北風が吹きます。南の海にある台風(低圧部)に,北から涼しい風が吹き込むのです。
 暮らすのには楽なのですが,この北風が,東京湾奥部に青潮を引き起こします。岸近くの海がサンゴ礁のように青くなり, 硫黄温泉の匂いがし,ウミネコやコアジサシが飛び回ります。青潮です。
 青潮の青は硫黄化合物の色,臭いは硫化水素の臭い。ウミネコが飛び回るのは,弱ったり死んだりした魚を食べるためです。 青潮になると海水中の酸素がなくなり,一晩にして底生生物や魚が窒息死するのです。

青潮はなぜ起こるのか?

 東京湾奥部には,湾岸住民が排出する廃水が長年流れ込み,海水が冨栄養状態になっており,夏場の高温でプランクトンが大量発生しますが(赤潮), その過程で海水中の酸素を多量に消費し,海水が貧酸素状態から無酸素状態になります。
 無酸素状態の海水は比重が大きく,海底に多量の無酸素水が溜まっています。
台風接近で北風が吹くと,海水表面の温度が下がり,同時に表層の海水が南に流され,それによって海底に溜まった無酸素水塊が岸近くに引き寄せられて, 湧き上がります。無酸素水塊には硫黄化合物も解けており,空気に触れて酸化し青い色と硫化水素臭が発生。青潮状態が目に見える状態になるのです。

青潮による生物被害

 青潮の状態が続くと,三番瀬などは無酸素の水に覆われ,底生生物や魚が皆殺しになり,二枚貝を捕食するスズガモが冬期に飛来しても餌がないという事態になります。
 青潮の起こらない海を作らねばなりません。

館山湾のサギ類 その後

 8 月14 日現在の館山湾です。海面にセグロイワシを入れた生簀があります。サギ類は,弱って浮きあがる魚をとり,近くで営巣し,無事巣立ちました。
 巣立ち直後,港内に幼鳥が多数いたのですが,この日はダイサギ24羽,アオサギ39 羽で,ほとんどが幼鳥でした。
 サギ類は,巣立ち後の早い時期にコロニーを離れ,小規模な夏ねぐらに移っていきます。

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