ほおじろの声

ほおじろ巻頭言 2024年12月号

三番瀬海域の埋立ての歴史
失われた生物種 減り続ける鳥

日本野鳥の会千葉県・幹事会

三番瀬の歴史 埋め戻された海岸

 三番瀬は,東京湾奥部に位置し,日本の高度成長期に周辺海域が埋立てられる中,残された唯一の干潟と浅海域で,東京湾本来の自然環境が残されている。
 埋立てが進む前,かつて陸側には広大な湿地環境(沼地,水田,蓮田,塩田)が広がり,塩生植物の生育する水際線の先には,アマモの繁る藻場があった。 アマモは光合成し海水に酸素を供給し,多数の生き物の住む豊かな江戸湾であった。
 現在の三番瀬は,船橋市,市川市の,かつての海岸を埋め立てた地先に残る海域で,本来の海ではないことを認識する必要がある。
 船橋側は「ふなばし三番瀬海浜公園」と呼ばれるが,行政区画では,船橋市潮見町と市川市東浜になり水際線は砂浜(一時,市川航路に向かう運河として掘削されたものを埋め戻し干潟になっている)だが,市川側は市川市塩浜で水際線は護岸。 塩浜1丁目の沖には,潮干狩り場として造成された人口干潟があり,干潮時にシギ・チドリ類の絶好の採餌場となっている。

毎年発生する青潮 被害を受ける生物

 暑い夏に涼しい風が吹くと,東京湾奥部で青潮が発生する。海水中の酸素がゼロになると,干潟や浅海域の生物が壊滅的被害を受け,海の生物を捕食する渡り鳥の餌がない状況を生み出す。 三番瀬の冬のシンボルのような存在,スズガモは深刻な餌不足に見舞われる。
 『令和5年度三番瀬鳥類個体数経年調査報告書』のスズガモを見てみよう。
 調査実施はNPO野鳥千葉(本会の調査部門と連携)。

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 2017 年4 月から2024 年3 月まで,三番瀬海域のスズガモの減少具合が見られる(横軸数値は年間の総数)。

地球規模で生息環境が悪化している

 スズガモは,東京湾全体で激減していて,減少の原因が東京湾の青潮だけでなく, 地球規模で問題が起こっていると推察され,スズガモ以外の種でも減少率が高い。