ほおじろの声

ほおじろ巻頭言 2025年6月号

を虐めない、鳥情報を拡散させない、
自然に対する倫理観を持とう

日本野鳥の会千葉県・幹事会

カメラマンが巣の前に終日座り込む

 県内では,サシバ,ツミ,フクロウ,アオバズク,コアジサシなどの巣に,県内外からカメラマンが来て,終日座り込み,繁殖を妨害し,野鳥虐待を続けています。
 キビタキ,サンコウチョウの巣の前で,鳴き声の音声を流し続け,親鳥にストレスをかけ続けます。
 そういう方に注意し,巣から遠ざかるようお願いしても,居直り,こちらを威嚇することさえある状況です。
90 年の歴史を持つ日本野鳥の会は,この状況に,どう対処すればいいのでしょうか?

鳥の巣の写真は撮らないように

 古くから,巣の撮影で営巣放棄させる事例がありましたが,撮影者は限られ,野鳥撮影が大衆化した現代の方が,被害がはるかに多いのは残念です。
 1970 年代,生態写真の第一人者の高野伸二さん(『フィールドガイド日本の野鳥』の著者)が,巣の写真を撮るのを止めようと会員に働きかけ,巣の撮影は控えるという倫理観が定着しました。
 テレビ局の取材に対しても,巣を撮らないように申し入れ,営巣場面の放映はほとんどありませんでした。現在,そうした倫理観がなくなったことを残念に思います。

鳥を虐めない、鳥情報を拡散させない、自然に対する倫理観を持とう

 鳥は美しく,雛はかわいい。それを写したいと思うのは,自然の感情だと思いますが,被写体になる鳥たちは命がけで繁殖行動をしているのです。 鳥を見る者は,それを見せてもらうのだということを忘れてはなりません。
 温暖化などの環境変化で,野生の鳥が減る時代です。日本野鳥の会は,鳥を虐めない,鳥情報を過度に拡散させないという倫理観を共有し,社会に対して,その考えを普及させ続けたいと考えます。皆さん,一緒に考えていきましょう。